おもてなしを受ける側の礼儀①
こんにちは。網野麻理です。
今日は「おもてなし」をされる側、受ける側の心がまえとふるまい方について。知っておいて失礼はない23作法についてご紹介いたします。
本日は1〜15作法までご紹介いたします。
「おもてなし」を受ける場合に気をつけたい、心構えとふるまい方を、シチュエイション別にまとめました。ひとつひとつのシーンに込められた「おもてなし」される方の気配りを、感謝の気持ちでいただくためにもぜひおさえておいていただきたい「おもてなし」される側の心がまえとふるまい方です。
1.香りに気をつける
食事に招かれ、料亭やお寿司屋さんなど個室や狭い空間に入るときは、自分の臭いで周りのひとに不愉快な思いをさせてはいけません。
これは飛行機の座席等でも同様です。
汗をかいてしまったら、到着する前に着替えるとかシャワーを浴びるとか、汗による体臭を落としてからその場に行きましょう。
特にお座敷にあがるとしたら、足の臭いには特に注意したいものです。靴下の替えをもっていって履き替えるというのもひとつの気づかいです。
香水や香りの強い化粧品にも配慮して、食材やお酒の香りを邪魔しないようにしたいものです。
2.到着時間は早くも遅くもなく
予約をした時間に遅れないように早めに到着しておくことはもちろん大切ですが、だからといって10分前に暖簾(のれん)をくぐるのではなく、予約した時間ぴったりにそのお店の扉を開きましょう。
お店は、先付けの用意にはじまり、ぴったり時間にお料理が出せるよう段取りしているので、予約時間よりも前に着いてしまうと、たとえ10分であってもその時間を埋めなければならなくなります。
特に人気店で満員だったりする場合には、予約の時間の前に行くと、お客さまをお待たせしていることでお店の側にいらぬ気をつかわせてしまったりもするのです。
また、お招きくださった側にも、先に招かれる側が到着していたらばつが悪い思いをさせてしまいます。
ですから、もし早めに着いてしまったら、お店から少し離れた近くで時間を潰し、ぴったりの時間にあらわれるということも大切な配慮のひとつです。
3.装飾品は外しておく
料亭等にいく場合には、指輪とか時計とかネックレスとか装飾品をはずしておきたいものです。
料亭や割烹では、高級・高額な器を使っていることが多いものです。
指輪や時計があたって大切な器が傷つくことを嫌って、装飾品が華美なお客さまには大切な器は使わないというお店も少なくありません。そういったお客さまが来店されたときには、出す器を傷ついてもいいものや傷つきにくいものに替えて出すこともあるそうです。
そういった余計な気づかいをお店の側にさせないために、お店に入るまえに装飾品をはずしておきましょう。このとき、お店に入ってから外すのは無粋ですから、あくまでお店に入るまえにはずしておきたいものです。
また、同伴する相手が気を許せる相手の場合、わざと装飾品をつけていって、待ち合わせの場所で理由を話し、いっしょに装飾品をはずすことも、同伴する相手への「おもてなし」のひとつです。
ただはずしてくれとお願いするのは、おしゃれをしてきてくれた相手の気持ちを踏みにじることになるので気をつけてください。
4.お座敷にはジーンズははいていかない
お座敷にカジュアルなジーンズでいくのはなぜだめなのでしょうか。
その理由のひとつに、畳を痛めてしまうからということがあります。硬いジーンズの生地は、畳表や畳の縁とこすれあって、畳を痛めてしまうのです。
単なるドレスコードとして「おもてなし」を受ける側の作法を覚えるのではなく、お店の側の畳までも大切にしたいという思いに配慮したいものです。
5.できるかぎりお店にまかせる
せっかく名店に伺ったら、できるかぎりお店の判断にゆだねるということも「おもてなし」を受ける側が心しておきたいことのひとつです。
たとえば、「喉をいやしたいので、柑橘系のロングカクテルをください」ではなく、「喉がかわいたので、それにあう飲み物をください」とお願いしたほうがスマートだったりします。
お酒の銘柄も、こちらで指定するのではなく、お店にまかせて、「1杯目のお酒をください」、「次のお酒をください」とお願いしてみてはいかがでしょうか。
お店の側では、お料理やさりげなく観察したお客さまの側の嗜好を考えて、最良と思える1杯を饗してくださるはずですから。
尊敬の念を込めて相手にまかせる、お店にまかせるということも「おもてなし」を受ける側のたしなみではないでしょうか。
6.蘊蓄を披露しない
いくら食材やお酒についての知識を持っていても、それを蘊蓄として語らないということも、特に名店ではたしなみのひとつです。
名店は饗されるもの、ひとつひとつが蘊蓄のかたまりといっても過言ではありません。美味しい理由があるのはあたりまえですし、それを声髙に語るのは無粋というものです。
あくまで謙虚に、専門家や招いてくださった方の説明に耳を傾けるという謙虚な姿勢こそ、「おもてなし」を受ける側の作法のひとつです。
特に若い方は、目上のひとや専門家への尊敬の念をあらわすためにも、知識をひけらかすのは避けたいものです。
7.さりげなく帰る時間を告げておく
「きょう、最後の1杯をお願いします」などと告げて、帰る時間をさりげなく想像させる気づかいも大切なことのひとつです。
閉店までいるのか、そろそろ帰ろうとしているのか、それをお店の側に伝えることで、お店の側の心づもりも変わってくるからです。
「きょうは思い切りとことん飲みたい気分なんです」と告げれば、閉店までいたいということを悟ってもらうことも可能です。
そういったやりとりも「おもてなし」を受ける側の配慮のひとつなのです。
8.お店のものを破損してしまったとき
たとえば、お店のグラスを割ってしまったとか、お茶碗を壊してしまったとか、そんなこともあるかもしれません。
だからといって、弁償しろなどといわれることはまずないでしょう。
でも、いい器を使っているお店にとってはたいへん大きな損失です。
もちろん、その場で「申し訳ありませんでした」とお詫びするのは当然なこととして、翌日、もう一度そのお店に菓子折を持参して再度お詫びの気持ちをお伝えしたいものです。
9.業界の符丁は知っていても口に出さない
お寿司屋さん等で、板前さんが使う業界の符丁を口にするのは、控えたいものです。
「アガリをください。」と言う声を多く聞きますが、やはり「お茶をください」といったほうが無難です。
「お愛想」ではなく、「お会計お願いします」というのも同様です。
プロフェッショナルの結界を越えて、土足で相手の世界に踏み入れないということも、「おもてなし」を受ける側の礼儀のひとつです。
たとえそれを知っていても使わないのがたしなみではないでしょうか。
それはなにもお寿司屋さんをはじめ飲食店だけではなく、飛行機に搭乗したときに、「ノーショー」とか「ディレイ」とか、プロのひとたちが使う言葉をむやみに使って、相手の領域に入っていかないことも気をつけたいことのひとつです。
10.ほかのお店の話をしない
この前どこそこにいったとか、どこそこに連れて行ってもらってどうだったとか、他のお店の話をするのはやめましょう。競合しているお店の話などはもってのほかです。
どんなお店に出入りしているかは、そのひとの立ち居振る舞いで自然にわかってしまうことです。
虚勢をはっているように思われて、むしろ恥ずかしいことかもしれませんから気をつけてください。
11.「おもてなし」くださっている相手にあわせる
お招きを受けてお客さまのところに参上するときに、相手に応じて腕時計を変えたり、車を変えることもさりげない配慮のひとつです。
普段はベンツに乗っていても、そのまま乗り付けるのではなく、場合によっては国産車でいくとか、いつもしている時計を外して、さりげないブランドの時計に替えていくとか、そんな細かい配慮も、「おもてなし」くださる相手へのさりげない思いやりのひとつではないでしょうか。
12.相手の都合を考える
お店に予約の電話をかけるときは、時間帯を選びましょう。
接客で忙しい時間や、逆に従業員の方々がお休みされている休憩時間は避けて、お店に迷惑がかからない、営業が一段落したあたりの時間帯を選んで連絡を入れたいものです。
13.出されたものはすぐにいただく
お食事は、出されたものをすぐにいただくことも「おもてなし」を受ける側のマナーのひとつです。
熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに食べてほしいと思っているお店の気持ちを、話に夢中になって踏みにじってしまうのは失礼です。
お寿司でも、握っていただいたらすぐにいただきたいものです。
14.お店の混み具合にも配慮する
満席なのに、「注文まだですか?」とたずねることは避けましょう。
特にある一定以上の水準のお店ならば、注文の品をお出しできていなことくらいはわかっていることです。
また、お店が満席で、自分達が食べ終わっていたら、たとえもう少しゆっくりしていたいと思っていても帰り支度をしましょう。
4人席をひとりもしくはふたりで使っているような場合にも同様で、席を移動しましょうかとこちらから申し出ることも必要です。
お店側の都合というものにつねに配慮することも「おもてなし」を受ける側の心構えのひとつです。
そういった配慮ができるお客になることで、お店からも大切にされるお客になれるのです。
15.料理の味付け、出すタイミングに口だししない
味付けや塩加減など、料理の細かな仕上げに関して、口にだして注文をつけるようなことは控えたいものです。
そして、ベストなものを、ベストなタイミングでふるまわれていると考えるべきで、細かな指摘などはせずにおまかせしてみてください。
おもてなしをする側に、尊敬の念を持って委ねてみてくださいね。
いかがでしたでしょうか。
明日は続きをご紹介してまいります。
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2017年6月6日